其ノ壱 其ノ弐 其ノ参 其ノ肆 其ノ伍 ・月水の術（げつすいのじゅつ） 攻撃に用いる術。一例としてわざとトキの声をあげず、 黙々と乗りこみ、敵の服装をして切り回る。 敵は何のことかわからず裏切りが出たと思いこむ、 逃げまどう敵に対し、太刀、槍合わせをせず、撹乱し、 暗号、合言葉をたよりに敵を打ち破る。 ・察気術（さつきじゅつ） 察気術とは、忍術体系のなかでも特に重要な術のひとつ。 気を見て吉凶禍福を直感する術。 戸隠流では殺気術とも言い、人が殺気を持って忍び寄る気配を 察知すべきことを重視している。 ・足並み十法（あしなみじゅっぽう） ぬきあしさしあししのびあし、という言葉がある。 これなど忍者の足使いからきているとおもわれる。 元は紀州流の伝書『正忍記』から伝わるもので、まず、 抜き足、それから摺り足、片足、小足、大足、刻み足、足り足、 狐走り、犬歩み、うさぎ歩み、などである。 ・ひし撒退き（ひしまきのき） ひしは菱とも書き、鉄びしの他、竹製や木製のものもあった。 これを敵の戸口やあらかじめ予定した退路に撒いて おき退くのが一般的であった。 逃げながら撒くのは携行が問題であった。 他に、鉄びしに糸をつけて引きずりながら逃げる方法もあった。 ・穴蜘蛛地蜘蛛の術（あなぐもぢぐものじゅつ） 家忍の術のひとつで、蜘蛛のように建物や土に穴をあけ 敵陣へ潜入する術である。 ・狐隠れ（きつねがくれ） 別に狐を真似て隠れることではない。 狩人に追われた狐は、水中に飛びこんで、水草やハスの葉や、 藻をかぶり、鼻先だけ出して隠れとおす知恵をもっているという （『万川集海』）。追手に追われた時、 竹筒や鵜（水器の一種）を使って潜水し、難を逃れることを言う。 ・遇犬術（ぐうけんじゅつ） 家忍の術のひとつ。敵の犬を忍び込む前にならす。 手なづかない場合は、毒殺する。 ・狸隠れ（たぬきがくれ） 狸がくれというのは、狸が狩人に追跡され、切羽つまると、 樹上に登って木と葉の茂みに姿を隠すことをもとにした隠遁術。 実際には、手釣、鈎縄等を用いて素早く大木の上によじ登る 隠れ方。狸退きとは異なる。登法の一種。 ・狸退き（たぬきのき） 狸隠れとは違う。敵が追ってきても少しもあわてず 「敵は向こうへ行った」などと言って、 自分だけいち早く脇へそれる方法。 また、物体を利用して敵をやりすごしておき、反対方向に 逃げるなど、狸の習性に習った退き方、引きあげ方。 ・陽忍術（ようにんじゅつ） 陰忍術は姿を隠し、誰にも知られず敵中にあらわれ謀略工作 を行うが、これとは反対に姿を表しつつ敢中に入り破壊工作を 行う謀略の術。遠入りの術、近入術、の二つに大別される。 ・陰忍術（いんにんじゅつ） 姿を隠し誰にも知られぬように、敵陣に潜入、謀略工作を行なう。 この反対が、陽忍の術という。 姿を表してもあらゆる手を使って敵の中に入り、諜報破壊工作に従事する。 ・家忍の術（かにんのじゅつ） 隠忍の術の二大分類のひとつ。 個人の住まいへ侵入する術。侵入術、物見術、見敵術、用心術、 穴蜘蛛地蜘蛛、配置術、偶犬術 （逢犬術ともいう）、用心術など十三のほか隠形術を入れてもいい。 ・隠形術（いんぎょうじゅつ） 姿を隠す術で、隠法と遁法がある。 ・物真似の術（ものまねのじゅつ） 物真似とは、犬と猫が喧嘩している騒々しい音や、 天井で鼠が足り回る音や、木をかじる音などを真似て敵を欺く術。 この術を使って退いていく時は物真似退きとも言う。 ・木の葉隠れ（このはがくれ） 敵に発見されないためには、自然の一部に溶けこむのが一番である。 状況に応じて木の葉や落葉などで偽装して隠れる。 現代の戦争でも木の葉隠れはどこの国の軍隊でもやっている。 （カムフラージュ） ・百雷筒退き（ひゃくらいづつのき）） 火器を扱うことに慣れた忍者たちが考え出した。 敵中に忍びこむ前に、退路にあらかじめ、鉄砲や火薬などを多数伏せておく。 退いて行く時、追手の前で次々と発火、爆発してゆく大仕掛け。 敵を驚愕恐怖させ、その隙に退いていく。 音響を利用する術として、音遁術の一種とも理解される。 ・観音隠れ（かんのんがくれ） 植木や立木、壁や塀等の近くに寄りそい、 敵や警備の者が近づいてきても、 大胆に棒立ちになったままじっと動かないでいること。 敵の意表をついて意外に見つからない。 袖で顔を覆い目だけ出して息の音を殺す。 参考・引用文献 新人物往来社 【歴史読本スペシャル71 忍の達人 影の奥義書】 新人物往来社 【別冊歴史読本72 忍びの者 132人データファイル】 学習研究社 【歴史群像シリーズ71 忍者と忍術 闇に潜んだ異能者の虚と実】 講談社 【バジリスク甲賀忍法帖 忍術と忍者の謎】